人となり

 専門は植生生態学ですが、民間企業(建設コンサルタント)から国立環境研究所勤務時代に農薬のリスク評価や外来種防除、環境修景といった異なる領域、異なる生物群にも足を踏み入れました 。最近は虫を題材とした研究のウェートが大きくなってますが、それでも虫は触れません...。

 その結果、「早坂=○○」と自信を持って言える武器が...ですが、唯一言えることは、「フィールドで起こる事象こそ真である」という信念をもって、題材にこだわることなく、そこにおもしろさやニーズがある限り「とりあえずやってみたら良いんじゃね!?」的考えで行動を移す、柔軟な姿勢を持った研究者であると自負します。

 でも、調査ありきで研究はしません。あくまで、ゴール達成に必要なデザインを確定した上で最短ルートで登頂する、というスタンスを取ります。

 あっ、言い忘れましたが、前提となる興味は「撹乱に対する生物の応答メカニズム」です。


研究スタイルと求める人材

どこかの先生が仰っていたのに感化され、その後勝手に私の座右の銘となっています。

所属学生にもこの3つの言葉の意味についてトクトクと説いてます。

 

"Only Power but a Little Brain!!"

"Study Nature, Not Books!!"

"Work, Finish, Publish!!"

"Publish or Perish!!"


主な研究テーマ

 自然・人為問わず、「環境攪乱が生物多様性に及ぼす影響と群集の応答メカニズムの解明」について検討しています。基本的な研究の立場は「応用に繋げる基礎研究」を行います。

 

  • 津波撹乱の生態学的意義の解明

 2011年に宮城県沖で起きた大地震と津波は自然生態系に何をもたらしたのでしょうか。火山噴火と同様に、津波攪乱はあまりにも偶発的な攪乱のため (今回の地震津波は1000年に1回の災害と言われています) その生態学的意義 (Ecological Consequence) もはっきりしていません。だからこそ、攪乱・遷移研究の貴重な題材として十分な科学的知見を収集し議論していく必要があります。(Hayasaka et al. 2012; Ishida et al. 2015他)

 一方で、私は、偶然にも(不幸にも!?行幸運にも!?)2004年に起きたスマトラ沖津波の調査も行ったことから、気候帯や組成の異なる沿岸生態系の津波に対する応答のメカニズムの共通性・相違性についても検討しているところです。(Hayasaka et al. 2009,2012他)

津波によって倒壊した護岸堤防
津波によって倒壊した護岸堤防

 

  • 交通網を介した外来種の広域分散メカニズムの解明

 外来種の広域分散とそれに伴う生物学的均質化 (Biotic Homogenization) にはかなりの割合で道路等の交通網が関連してそうです。 (Hayasaka et al. 2012; Uchida et al. 2014他)

路面間隙植生(写真はシナダレスズメガヤ)
路面間隙植生(写真はシナダレスズメガヤ)
  • 外来種の生態リスクと防除。根絶手法の解明

 日本には様々な外来種が侵入し、そのいくつかは侵略性 (Invasiveness) を獲得して在来の生態系や生物多様性に何らかの影響を及ぼしています。そこで我々は、生態的、化学的、物理的等様々な角度から、これら外来種の防除・根絶に向けた研究・取り組みを行っています。(Inoue et al. 2015; Hayaska et al. 2015;Seko et al. 2018; Nakahama et al. 2019他多数)

 

  • 雑草防除の効率化検討

 上記の道路研究に関連しますが、アスファルト等への植生の侵入・繁茂は視認性の低下やアスファルトの劣化等を引き起こします。一方で、行政は社会資本の整備には多額の金をつぎ込みますが「維持管理」には金をかけません。そこで、低コストかつ効率的な雑草管理方法について検討しています。同様に、法面等にクズ等の強害草が繁茂すると法面植生の本来の機能が低下したりそこにある生態系を大きく改変してしまったりします。そのため、これら強害草の管理も重要な課題となっています。(Hayaska et al. 2011; Uchida et al. 2013; 西野ほか 2019他)

 

  • 農薬による生物多様性への影響評価

 生物多様性の脅威のひとつに農薬をはじめとする人工化学物質が挙げられます。農薬は作物の品質・収量の確保に欠かすことはできませんが、農村生態系を構成する動植物への影響が指摘されています。一方で、日本における農薬の安全性 (生物リスク) はOECD (経済協力開発機構) のテストガイドラインに準拠し、藻類、魚類、および外来種のオオミジンコの「3点セットの試験生物」に対する室内急性毒性試験結果のみで評価されます。たった3種類の生物で複雑な生態系・生物多様性への影響を代弁してしまっています。そこで、我々はこれら課題に対応すべく、国立環境研究所等と協力して、個体レベルよりも上位の「群集レベル」での生態リスク評価手法の開発に向けた試験 (実験生態系:メソコスム) を実施しています。(Hayasaka et al. 2012,2013,2014; Kobashi et al. 2017; Hayasaka et al. 2019; Hashimoto et al. 2019他多数)

 

その他の研究テーマ

  • 絶滅危惧種の保全 (輿猶ら 2014他)
  • マングローブ林の動態や保全 (Hayasaka & Fujiwara 2007; Hayasaka et al. 2012)
  • ため池植生の多様性維持機構の解明 (Hayasaka et al. 2018) 
  • 半自然草地の機能的多様性の定量化
  • 災害/攪乱跡地の環境修復・緑化

などなど。

研究のキーワード

生態リスク、環境アセスメント、植生、攪乱、農薬、外来種防除、環境緑化、機能形質、など